SCP-███-JP-MMに関する聴取記録

[警告]本聴取記録の内容はすべて個人の発言であり、その真偽について一切保証しない。

 

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SCP-███-JP-MMの内部

登場人物:

SCP-███-JP-MM-1:SCP-███-JP-MMに長期間暴露した人物。今は貝類をしている。

 ████研究員:あまりアサゴハンを食べないらしい。今は魚類をしている。

 

20█/██/██ 01:10 記録開始

SCP-███-JP-MM-1:やるか、昔話。しょうもない自分語りなので聞き流していいよ……

████研究員:なぜ急に

SCP-███-JP-MM-1:うーん、████さんのツイートがあまりにも素晴らしかったからですかね。「実在性のある人間」という表現を、私はずっと待っていたんだと思います。さて、████年くらいから某メタバース*1に入り浸ってて、そこが、それはそれは「実在性」がふわふわしてて居心地が良かったって話を始めますか。

SCP-███-JP-MM-1:ええと……たしか2008年に始まって、2018年の頭に終わった、meet-meっていうメタバース*2です。もしかすると知っているかもしれないですが……。もしかすると「面白いこと以外何でもできるゲーム」の方が分かりますかね? 「東京23区を再現した3D仮想空間」を標榜していたメタバースだったんですが……まあ、その精度が低いというか……再現しているのが主要地域だけで、それも大した再現じゃなかった。言ってて悪口にしか聞こえないメタバースだが、その甘さというか、好きだったなあ。

████研究員:その"世界"は初めて知りましたが、これは……(検索エンジンを用い関連する画像を閲覧)現代から見ればなんともノスタルジアですね

SCP-███-JP-MM-1:その通りです。グラフィックは今見ればとてもいいとは言えないどころか、2008年の開始当時の東京をそのまま保存しているようなものだった。現実じゃ渋谷駅の再開発はめまぐるしいものだが、この"世界"じゃそのままだった。かまぼこ屋根は残っていたし、東横線はいつまでも地上にあることになっていたなあ。

SCP-███-JP-MM-1:再現されていない地域は緑の大地が延々と広がっていたんですが……個々人が課金して区切られた土地を運営から借りて、家とかを建築したりすることが出来たんです。中には居酒屋みたいな建築をしたり、バーみたいな建築をしたりする人もいて、そこに夜な夜な集まって話していたのは懐かしいな……。話っていってもしょうもない話で、流れてる曲の話とか、お酒の話とか、ニュースの話とか。すき焼きに入れるのは牛肉か豚肉か?で朝4時まで激論したのはいい思い出ですね。自分は[編集済]にあるお店に入り浸ってました。いつだったか現実じゃどうなってるか気になって訪れてみたら[編集済]だった…… それはさておき、そこにいる人、ほとんど「実在性」なかったなあと思って。

████研究員:wiki項目全部○○しよう(提案)なのに賭博をしろ(脅迫)だけこれなの大草原じゃ 下北沢駅周辺が[編集済]しているのはそういうことなんすねぇ

SCP-███-JP-MM-1:下北沢駅周辺は流入以前に用意されていた土地に対して流入人口が圧倒的で最初の数日で完売してましたねえ……。自分はあの人たちが言うところの「原住民」の側でしたが、あの人たちが原住民がこれまでしてきた課金と別次元のペースで課金しまくって、課金アイテムの相場がめちゃくちゃなことになったのはウケちゃった。それまでが過疎どころの話じゃなかったし、あの人たちが入ってきたおかげでサービス終了が1年延びたらしいとまことしやかに囁かれていたりするけど、真相はわからずじまい。でもそれでいいんですよ。真相なんてどうでもいいんです。

SCP-███-JP-MM-1:お店の人の話に戻ると、SEをやってるらしい人とか、「自分はWikipediaに項目がある」と言ってる人とか、高校生だと主張している人とか、いろんな人がいたけど、どれも確証が無いんですよね。でもそれでいいというか、確証が無いほうがいいと思うんです。

████研究員:閉じた世界、内輪の世界、何者にもなれるが何者でもない……あぁ…なんか…あったかい……。こんなのがあったのかぁ~いいなぁ~

SCP-███-JP-MM-1:あの人、本当にWikipediaに項目があるのかは今もちょっと気になるし多分本当は無いんだけどどうでもいいんですよね。それに、8年近くやってて1回もオフ会やらなかったのはどこかにそういう暗黙の了解があったんじゃないかなって思ったりするよ。……もしかして自分が誘われなかっただけか?だとしたら……いや、それもまた良しとしよう。

SCP-███-JP-MM-1:誰かがこのメタバースを「家」と表現していたのがずっと印象に残っているんです。なんだろうな、オンラインゲームって戦ってなにかを達成したり、誰が一番か決めたり、そういうのが多いけど、そういう人たちが帰ってくる家ってイメージで。だから、さっき言った「内輪の世界」って言うのは合っている。内輪なのはよかったんだけど、あまりにも内輪すぎて人がやってこなかった。商業的に失敗してしまった……。

████研究員:確かに現在のツイッタランド(アバターいたり画風で判別できたり)の空気感と居心地は似ているのかもしれないなぁ……。改めて考えてみると画風で判別しているのすごいなぁ……アイコン見ればその人ってわかるんだもんなぁ~

SCP-███-JP-MM-1:Twitterに近いといえば近いんですけど、3DCGのアバターがあって、それが自由に移動できるという点が割と大きな違いかもしれないと思ったりしてます。というのも、あるお店ではこういう口調だけど、別のフレンドさんと会うときは別の口調で、でもどっちも同じ名前だし同じアバターなんですよね。Twitterで言えばアカウント分けに近いとは思うんですけど、決して分けてはいないんですよね。どっちも連続している。ある人は決まった持ち物持ってる、とか、ある人はずっとシカの着ぐるみ着てるとか、そういうキャラ付けが出来ていたんです。そういえば、鴨の着ぐるみとネギのリュックがあったので、「鴨が葱を背負ってる」人がいましたね……。

████研究員:アカウントの連続性のキワミのような存在であるため、████の思考としてはむしろ歩いて移動している感じですかねぇ……。ツイッタはネットの海の中なので泳いでいるんですけど

SCP-███-JP-MM-1:それは████さんが特別ですよ……。このサツバツイッタランドで割と"meet-meしてる"のは称賛に値する……かどうかはわからないけれども、少なくとも自分には出来ない……。そういえば、下北沢に住んでた人たちがチャット番号……そうだな、ちょうどラジオの周波数みたいに、番号を合わせた人だけが聞こえる設定の数字を810にしてて、他の人から見ると当然何も聞こえないから「不気味な無言集団」って言われてたのちょっと思い出したな。

SCP-███-JP-MM-1:実在性の話に戻ると、あの世界、うまく行ったらうまく行かなかったんだろうなあという矛盾みたいなものがずっとあって、あの世界自体が「実在性」薄いなって思うんです。たくさん人が集まったら商業的には成功するかもしれないけど、あの世界らしさとか、そういうのはなくなってしまうよなあと。

████研究員:人が居過ぎると"違う"存在が出てきてしまうのは本当にそうだと思うなぁ……。ツイッタランドに[編集済]だの[編集済]だの[編集済]を持ち込むなよ……ツイッタランドだぞ?っていう"世界に存在するべきでない"存在がなぁ……。ノリを理解しているというか、理解っている人同士のやり取りだけで完結すればそれでいい。しかしそれでは長くは続かない……

SCP-███-JP-MM-1:████さんには申し訳ないけど、コロナ禍よりも前にこの世界終わっておいてよかったなあって思っちゃうんですよね。続いていたら今頃どうなっていたか想像もしたくないんです。多分Twittermeet-meで検索すると元meet-meユーザーの人たちが[削除済]の新サービスについてつぶやいているツイート出てくると思うんですけど、ああいうメタバースの風上にも置けないような金と欲にまみれたどうしようもないなんちゃって仮想空間がボコボコ湧いてきてるんですよね。

████研究員:ファイナルソード未満とか言われているらしいあれかぁ! う~んグラフィック云々の前にアレに世界としての魅力は…無さそうですなぁ…確かに……。

SCP-███-JP-MM-1:サービス終了の頃、ちょうど少女終末旅行がテレビ放送されてて、現実世界はもしかするとチトとユーリの二人が旅をして、私達が生きた形跡をたどってくれるかもしれない「可能性」が留保されているけど、あの世界は終わったら最後、その可能性すら葬ってしまうのは、現実世界よりも残酷だなあって思ったりしたなあ。ああそうだ、ちょうどその頃VTuberが流行り始めたんですよね。当時は商機逃したなあなんて思ってたけど、昨今の情勢を見るとありゃ逃してよかったんだなって今になったら思いますね。

████研究員:世界の終わりを目にした者……最期の時何が映ったか……

SCP-███-JP-MM-1:絶望と仲よくなったよ。

SCP-███-JP-MM-1:ちなみにサービス終了記念(?)イベントが「卒業式」だったのはいろいろ示唆的だと思うよ。そういえばそこでの運営会社社長の挨拶が後日ネット上で「オンゲ終了にショックを受けて自殺した人物の遺言」ってことになっててウケちゃったな。この社長、昔からたまにふらっとログインしてその辺でユーザーと立ち話したりしてて、今から考えるとすごかったって思うよ。サービス終了が告知された夜に社長が現れ、あるユーザーから「もっとユーザーの声を聞いて!」と言われて、その場で「これから毎日ログインしますね」って言って、実際にどうしても都合が合わない日以外は欠かさずログインしてたのは驚いたなあ。

SCP-███-JP-MM-1:……なんというか、壮大な自分語りなのはわかっているんだけど、内輪だし、どこかに記録とか知っている人を増やしておかないと、本当になかったことになるというか、得体のしれないよくわからないものになっちゃう気がして、今こうして聴いてもらえるのはとてもありがたいよ。

████研究員:暖かくて、優しい、静かな世界の終わり……。あぁ……いいなぁ……。

SCP-███-JP-MM-1:社長のあいさつ、どこかにあるかな……ああ、あった。この部分がすごい好きなんです。

世界の終わりはね。優しい雰囲気に包まれていました。
meet-meで遊んでくれている。meet-meはいろんな人がいるけど、適度な距離感を保って、それぞれが楽しめる土壌があるよね。
多様性を受け入れることができる世界。

それがここにきて、その適度な距離感が少し縮まっている感じがしていて、そこに生まれているのは優しい雰囲気。私はこの雰囲気が大好き。
すごい親切にしているとかそういうのじゃないの。なんか、みんな仲間というかね、話したことあっても、なくても。
暖かいよ。

████研究員:世界を愛した創世神は審判の日に唇から血を流すか

SCP-███-JP-MM-1:なんというか、絶望と仲よくなるとこうなるんですっていう説明文としてあまりにも適切だなって。

████研究員:画像がまだ生きていたので取っておく。これは創作の根底に誰もが持っておくべき世界の記憶だよ……。創世神の気持ちになったら涙が出てきそうですよ……。世界が終わることを受け入れる民族。どうにか回避しようと足搔くかもしれないが、世界を恨むことはしない。多分現在のツイッタランドだったら神の名を罵って死んでいく民族が多いんだろうなぁ……

SCP-███-JP-MM-1:あと、イベント終了後にシステムメッセージで運営から本当の最後のメッセージが流れたんですが、これ、とてもいいなって思って、今も印象深いんですよね。イベント終了からサービス終了まで2時間くらい間が空いていたんですけど、再確認のための最後の時間なんですよね……

meet-meで出会った大切な仲間と今後もネット上ではぐれないよう最後の時間で再確認し、それぞれログアウトしてください。」

SCP-███-JP-MM-1:世界の終わりは楽しかったよ。……これはあれだな、3年遅れの弔辞。

████研究員:生まれ変わったらまた会おうの約束……涙腺が……。最期の時間に立ち会ったような気になって涙声です。鼻をすすっている。情景が伝わってくるのよなぁ……グラフィックは違うだろうけど空気は…察せるよ……

SCP-███-JP-MM-1:ちなみに、このゲーム権利的にいろいろ怪しい部分があるとされていて、仮に継続していたら何がどうなっていたかわからないという……なのであの世界が復興することはないですね。

████研究員:世界が終わった後にとんでもない情報が入ってきたぞ…(困惑)

SCP-███-JP-MM-1:一応日本の時価総額ランキング一位の某社が絡んでいたゲームなんですけどねえ……? 「コジラ」とかいう謎の巨大生物が渋谷を襲った結果[削除済]から警告文もらったり、「がんばれニッポン」と書かれたメガホンアイテムを実装したら[削除済]からツッコまれたり、いろいろガバガバで楽しいよ……。そういえば「コジラ」、2010年頃を最後に出現しなかったのにサービス終了の3日前くらいになって渋谷を再び襲っててウケちゃったよ。怖いもの知らずが過ぎる。

████研究員:どうせ世界が終わるんだから何やってもいい理論だいすき

SCP-███-JP-MM-1:サービス終了告知の後は課金とかに関わるもの以外のバグ利用がかなり見逃されたので、下北沢に住まう人々を中心にめちゃくちゃなお宅が乱立したとかしてないとか……?たぶんニコ動で検索すると出てくると思いますよ。なんだかこんな時間までキーボード叩いてるの、あの頃を思い出してちょっと懐かしいです。

████研究員:なるほど……(動画共有サービスで関連動画を閲覧)2本ぐらい裏技動画を見てきたが…余りのガバガバさに愛があふれたゾ…これ人数集まったら楽しいやつだな。

SCP-███-JP-MM-1:健在だった頃は「面白いこと以外何でもできるゲーム」って言われてたのが、終わったら「みんなと一緒なら面白かったゲーム」になっててウケちゃった あくまでゲーム自体は面白くないんですよね。たしかさっき言ったと思うんですけど、「家」って言われてるのがまさにそこだと思うんですよ。家って別にそれ単体じゃなにも面白くないですけど、みんなで集まれば楽しいことができる。

SCP-███-JP-MM-1:あー、ゲームとしての実在性が薄いの、家だからか。「実在性」という物差しをくれてありがとうございます。3年越しの宿題を果たせたような気がします。長々とお付き合いいただきありがとうございました。

03:56 記録終了

 

補遺1

████研究員:古くから続く世界だと、新しい世界に比べて見るに堪えないとか言われがちだけど、その新しい世界は古い世界の技術の賜物だよね?と圧を掛けたくなる。[削除済]→[削除済]みたいなことよ。そりゃアプデで一新して別物みたくなったらすごいわ。

SCP-███-JP-MM-1:ううん、どうなんだろう。いま出てきてるのを見ると古い世界は技術としても思想としても顧みられてない気がします。それがとても悲しい。まあ今はコロナ商機を逃すまいと必死で、顧みる余裕が無いのだろうなと…… でもいずれちゃんと検証してほしい。誰がやるんだ?

SCP-███-JP-MM-1:そういえばあの世界もできた当時はセカンドライフという別のメタバースがブームになってたから、創造主たちも必死だったんだろうなあ。結果的にその商機は逃したけれども。どこかのネット記事で8か月で作ったみたいな話があった気がします。

 

補遺2

SCP-███-JP-MM-1:そういえば[削除済](28)みたいな……、いや、[削除済]に[削除済]を足したような人って言ったほうが正確か。あの人今どうしてるんだろう。元気にしてるかな。まあそれ自体実在性薄いんですけどね。本当に女性なのかも分からないけど、誰も気にしてなかったし自分も気にしてない。……実在するのか??

 

補遺3

████研究員:終わった世界の歴史を学び、また成長した████である……終わったと言えばそうだが、終わってはいないんだよな。

SCP-███-JP-MM-1:世界はあの日確かに終わったけれども、歴史はまだ終わっていない、と信じたいですね。……終末の宣告から終わりまでの134日間についてはいずれまたどこかで、ね